幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
第三章
会津での再会
総司は洋装に着替えると、銀月さんを呼んだ。
「そんなお体で会津に行くのは無謀です」
人間の姿の銀月さんは、眉を吊り上げて言った。
「お前の力を貸してほしいとは言わない。俺たちは自力で会津に行く」
「頭領!」
「すまん、銀月。俺は、人間のまま果てることを決めた。
俺が死んだら、お前がもののけたちを率いてくれ」
総司は簡単に書いた遺言状を、銀月さんに渡す。
それを見た銀月さんは、ますます怖い顔をした。
「こんなもの、他のもののけたちが認めるはずないでしょう」
たしかに……もののけに遺言状を残す習慣があるとも思えない……。
今までの恩を仇で返される結果となった銀月さんは、明らかに怒っていた。
はらはらして見守るあたしを挟んで、二人はにらみあう。
「今までお前たちの力を貸してもらったのに、何の恩も返せなかったことはすまないと思う。
けど俺はやっぱり、完全なもののけにはなれない。
俺を人間として認めて、育ててくれた人たちのためにも」