幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
「誰がどう世の中を変えても、周りはだんだんとそれに慣れていくってことだ」
「総司……」
「先のことは誰にも分らない。
俺は勝算がなかろうと、自分の士道を貫きたいだけだ」
将軍が逃げ、幕府がなくなった今、残っているのは誠の武士を目指した、新撰組の『士道』だけ……。
「……それに、旧幕府が完全に倒れようってときに、誰も命がけで戦う者がいなかったんじゃ、格好悪いだろ?」
総司はいたずらっ子のように笑う。
格好悪いからって……それじゃ、子供のケンカの理由みたい。
「士道って、ただ意地をはってるのとどう違うのかな?あたし、いまだによく理解できない」
小さい声で口を挟むと、怖い顔をしていた銀月さんが、つりあがっていた眉を下げて、ため息をついた。
「楓様に同感です。もののけには、およそ理解しがたい」
そう言うと、彼は諦めたように、投げやりな笑顔を浮かべた。
「あなたはひどい人です。私たちを期待させて利用しておいて、勝手に離れていくのですから」
「……すまん……」