幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
「あなたが、人間の世界で生き続けたいと言うかもしれないことを、先代はわかっていらっしゃいました。
その決心がついたときに、渡してくれと言われていたのです」
「父が……」
そういえば、銀月さんと会ったばかりの頃、総司のお父さんは人狼として人間の世に産まれてしまった総司のことを心配していたって言ってたよね。
「ありがとう」
総司は刃をしまい、銀月さんに頭を下げた。
銀月さんも総司に頭を下げると、あたしにも同じようにする。
「銀月さん……大変だろうけど、がんばってね」
彼はどこかで、総司のお父さんの言う通りになることを予想していたのかもしれない。
根拠はないけど、なんとなくそう思った。
「大丈夫です。なんとかなるでしょう。先代が亡くなってから総司様が見つかるまで……いえ、見つかってからも、
実質私がもののけたちをまとめていたわけですから」
「お前、最後にさらりと嫌味を言ったな」
総司が言うと、銀月さんはふっと笑った。