幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
「総司……」
会津若松・七日町の清水屋についたあたしたちを出迎えたのは、まだ着物姿の副長……いや、土方局長だった。
どうやら、足の怪我は治り切っていないみたい。
「遅くなりました、土方さん」
そういう総司も、顔色は決して良いとは言えない。
馬の旅は予想通りつらく、あたしたちは休みながら、もののけの森を出てから7日後にここまでたどり着いた。
銀月さんに頭を下げて送ってもらったら、一晩で着いただろうに。
でもそこは、武士としてのけじめだもん、しょうがないよね。
旅籠の一室を借りた副長の部屋は畳で、小さな文机が置かれていた。
その上に書状や紙の束が所狭しと置かれている。
なんだか、壬生の屯所にいたころと同じような風景だな。
「無理すんじゃねえよ。完全に治るまで、ちゃんと寝てろ」
土方……局長と呼ぶのはまだ違和感があるから、土方さんと呼ぼう。
土方さんは、不機嫌そうな顔で顔をそらし、文机の方に向き直る。