幕末オオカミ 第三部 夢想散華編



「総司……」


会津若松・七日町の清水屋についたあたしたちを出迎えたのは、まだ着物姿の副長……いや、土方局長だった。


どうやら、足の怪我は治り切っていないみたい。


「遅くなりました、土方さん」


そういう総司も、顔色は決して良いとは言えない。


馬の旅は予想通りつらく、あたしたちは休みながら、もののけの森を出てから7日後にここまでたどり着いた。


銀月さんに頭を下げて送ってもらったら、一晩で着いただろうに。

でもそこは、武士としてのけじめだもん、しょうがないよね。


旅籠の一室を借りた副長の部屋は畳で、小さな文机が置かれていた。

その上に書状や紙の束が所狭しと置かれている。

なんだか、壬生の屯所にいたころと同じような風景だな。


「無理すんじゃねえよ。完全に治るまで、ちゃんと寝てろ」


土方……局長と呼ぶのはまだ違和感があるから、土方さんと呼ぼう。


土方さんは、不機嫌そうな顔で顔をそらし、文机の方に向き直る。


< 186 / 365 >

この作品をシェア

pagetop