幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
「近藤先生がいないからこそ、俺があなたのそばにいようと思ったんです。
戦に出ずとも、あなたの身の回りの手伝いはできるから……そうさせてください」
「あたしも!えっと、読み書きはできないけど、伝令とか……炊事とか洗濯なら、手伝いますから」
二人そろってそう言うと、土方さんは赤いまま文机に向かってため息をつく。
「……ああそうかよ。勝手にしろ」
もう……本当は総司がそばに来てくれて、嬉しいくせに。
相変わらず素直じゃないんだから。
お茶でも頼んでこようかと思ったとき、襖の向こうから声がした。
「局長、松本先生がいらっしゃっいましたが」
「おう、お通ししろ」
松本先生?って、もしかして……。
廊下を歩く足音がして、すぐに襖が開く。
「土方さん、具合はどうだい?って、あ!」
「あーっ!松本先生!」
現れたのは、相変わらずつるつる頭の(医者だから当たり前だけど)タレ目のおじさん。
亡き家茂公の主治医、松本良順先生だった。