幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
鳥羽伏見の直前、近藤先生の療養のためにいた大阪城で別れて以来だ。
あの戦で大敗し、江戸に来てからも医学所で近藤先生の肩の傷を診てくれていたけど、そのときはバタバタしていて会いにいけなかった。
「生きているとは聞いていたが……こんなところで会えるとはなあ!」
松本先生は嬉しそうに、タレた目をますます下げる。
良かった、元気そう。
こんなところにいるってことは、松本先生もお尋ね者扱いになってしまっているのだろう。
そのわりには表情が明るくて、ホッとした。
「近藤さんのことは残念だったなあ。土方さんも足はだいぶ良くなったが、ときどきめまいがするみたいで……」
「おい、医者が患者の秘密をべらべら他人に話していいのかよ」
「彼らはあんたの家族みたいなもんだろ?」
渋い顔で文句を言った土方さんを気にすることもなく、松本先生は足の包帯をほどき、傷を診察する。
「めまいって?」
総司が聞きなおすと、土方さんはちっと舌打ちした。
「しらねえよ。原因不明だ」