幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
それでも心配そうな総司に、松本先生が柔らかく言う。
「気鬱じゃないのかい。それで眠れなくなってめまいがするのは当たり前だ」
それって……近藤局長が亡くなったことが原因で、眠れなくなったってこと?
それは無理もないと思うけれど、本人は認めない。
「京にいるころから、ぐっすり寝たことなんてありゃしませんよ。
それでもどこも悪くなかったんだ。今度だって、足さえ治ればすぐ良くなります。
座り仕事ばかりだから、立ち上がった時にくらっとするだけで」
「はいはい。何か他に症状が出たら、すぐに知らせてください」
松本先生にさらっと流されて、土方さんは悔しそうにまた舌打ちをした。
そんなに必死になって否定するってことは、本当にめまいがして困ってるって言ってるようなものじゃん。
「あ、そういえば!総司、あのこと!」
「ああ?どのことだ?」
「もう!」
すっかり忘れている総司を放っておき、あたしは土方さんの前に、懐から出した護符を取りだす。
そっと畳まれたそれを広げると、中には朧の黒い呪符が。