幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
迫る闇
慶応4年5月
京ではとっくに蒸し暑くなっているであろう季節も、会津はまだどこか涼しい風が吹いていた。
戦うことしかしてこなかった総司が、今ではまるで土方さんの小姓。
身の回りの世話から、事務仕事の手伝い、使い走り。
おおよそその実力に似合わないような仕事をしていた。
体が元気なら、土方さんの代わりに130人の新撰組を率いて白河で戦っている斉藤先生のところに合流するのに……。
「はあ~……」
「いい湯だな……」
あたしと総司はなぜか、温泉につかっていた。
ここは土方さんが足の療養のために通っている天寧寺近くの温泉。
「俺は近藤さんの墓を一人で参りたいんだ。お前たちもその間ゆっくりしてろ」
土方さんがそう言ってくれたので、おもいっきり寛いでいた。
ちなみに土方さんは天寧寺に近藤先生のお墓を作って、湯治のついでにいつもお参りしている。
あたしたちがいるとカッコつけちゃうから、たまには一人でお参りしたいんだろう。