幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
「お前ら、どうして……!」
あたしたちの姿を見つけた副長は、その目をまん丸くしていた。
近藤先生がいないこのとき、指揮官となった副長は奉行所の中にいた。
「上様の命令で帰ってきました。近藤さんの護衛には、別の狼をつけてあります」
総司は早口で、局長は「動けない自分の代わりにトシを助けてやってくれ」と、気持ちよく送り出してくれたことを伝えた。
「ちっ……助けか。気持ちはありがてえが、どうもこうもありゃしねえ」
副長は厳しい顔で、今の戦況を告げる。
高台にある御香宮から、敵は奉行所に向かってさんざんに大砲を撃ってきている。
もちろん奉行所にも大砲はあるけれど、こちらが低地だということと相手の大砲と性能の違いもあるのか、撃ち返してもまったく手ごたえがないということだった。
「だから、永倉さんたちが斬り込んでいったわけですね」
「自ら決死隊に志願してな……。他のやつらも、それぞれ違う道から敵の本陣に近づこうとしているが、ああやってバカみたいに鉄砲乱れ撃ちされちゃ、それも容易くない」
副長は悔しそうに言った。