幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
「どうして……どうしてだよっ、土方さん……!」
総司は震える手で、近くにあったあたしの手をにぎった。
「楓……」
「いるよ。ここにいる」
並んだ二人のそれぞれの胸から、まぶしく光る球体が現れる。
強く優しい、本当の兄弟よりも強い絆を持った二人の魂だ。
きっと、うまくいくはず。
「土方さん、ありがとうございます。
あたしもあなたが、本当は大好きでした。お兄ちゃんみたいだと、思っていました」
最初は大嫌いだった。
鬼みたいな、冷酷で人の心なんかちっともわからないやつだと思ってた。
でも、本当は誰よりも、あたしや総司のことを想ってくれていた……。
「気持ちわりいな……。お前は……今まで通り威勢よく、総司と……歩んでいってくれよ……」
ゆっくりとまぶたを閉じていく土方さんが、微かに微笑んだ気がした。
「幸せに……」
その一言を最後に、土方さんの呼吸が一瞬止まった。
彼の魂は体を完全に離れ、天井の方へと昇っていく。
かと思うと、音もなく破裂したように、光が四散する。
それは夜空の星々のように、きらきらと輝きながらあたしたちに降り注ぎ……やがて、消えてしまった。