幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
たしかに、敵は洋装に鉄砲を持っている者ばかりだった。
対する旧幕府軍は旧式の甲冑に刀や槍。
身軽さの点でも、武器の持つ間合いにしても、明らかにこっちが不利だった。
──ドオオオン!
そうして話している間にも砲弾が撃ちかけられ、建物全体が揺れる。
「土方さん、ダメだー!一君の陰陽術でもみんなを守るのに精いっぱいで、敵に近づけやしないよ!」
懐かしい声に、ハッとそちらを振り向く。
すると、隊服のあちこちを土と血で汚した斉藤先生と、獣耳を生やした平助くんがこちらに駆け寄ってきていた。
「あれっ、総司に楓!どうして?」
「上様直々に、俺にもののけたちを指揮しろと命令があってな」
「なるほど」
二人ともボロボロだったけど、なんとか大けがはせずに帰ってきたみたい。
ほっとしたのもつかの間、それまで黙っていた銀月さんが口を開いた。
「土方殿、我らもののけは、夜に本来の力が発揮できます。
日が落ちて敵の砲撃が止まったころ、敵陣に攻撃をしかけましょう」
「夜か……」