幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
目の前の弱き者を守る。
そういえば、京の頃は市中の治安維持があたしたちの任務だったっけ。
斉藤先生は、あの頃からまったく変わっていないんだ……。
何度敗北を経験しても、心の中の誠は、揺らいでいない。
そんな斉藤先生がとっても強く見えて、うらやましくなった。
「俺があっているとか、お前が間違っているとか、そういうことではない。
お前はお前の誠を貫け、沖田」
強く、見つめ合う二人。
「ああ。俺は、近藤さんや土方さんと共に見た夢を追い続ける。
新撰組の名を背負って、最後まで戦う。まだ、終わらせるわけにはいかない」
人にはそれぞれの『誠』がある。
たとえ、強い絆で結ばれた仲間と別れることになろうとも、それを曲げることはできない。
総司も斉藤先生も、どちらも間違っていないんだ。
二人は視線を交わすと、ふと笑みをこぼした。
「今までありがとう。お前のような最強の剣士と働けたことを、誇りに思う」
斉藤先生が総司に手を差し出す。
たしかこれは、西洋式の挨拶……だったような。
総司はその手をしっかりと握った。