幕末オオカミ 第三部 夢想散華編


「俺もそう思います」


「じゃあ……」


「けれど、俺は勝ちたいから蝦夷に行くんじゃないんです。
ただ、生き残った幕臣たちと行けるところまで行ってみようと思うんです」


総司の言葉に、松本先生が眉をひそめる。

それでも総司は冷静に告げる。


「先生は江戸に戻ってください。
有能な人だと新政府軍の人間も知っているはずだから、きっと大丈夫です」


松本先生は、幕府側の人間だったけれど、新撰組のように討幕派を手にかけたりしていない。


敵側だって、有能な医者をむざむざ殺すようなことはしないだろう。


「土方さん。あんただって、有能な人間じゃないか」

「有能?俺が?」


総司ははは、と苦笑を漏らした。


「買い被りすぎですよ。俺のような無能者は、ただ戦うしかできないから、そうしてきただけです。
そして、これからもそれしかできない」


そう言われると、松本先生は口を閉ざした。


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