幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
「元気そうだね。良かった」
「まあね。今度はあんたの話を聞かせてもらうよ。
さあ、寒いだろ。中に入って」
どうやらこの屋敷のご主人は留守らしい。
槐は客室にあたしを通すと、湯呑ではなく、持ち手のついた西洋のカップに、珈琲なるものを淹れてくれた。
「……これ、泥水?」
「なわけないだろ。豆からできた飲み物だよ」
「にが~い!」
「砂糖とミルクを淹れなきゃ、そりゃ苦いよ」
槐はあきれながら、てきぱきとあたしをもてなしてくれる。
部屋の床には毛足の長いじゅうたんが敷き詰められていて、天井にはガラス細工のキラキラした照明が。
暖炉には火がいれてあり、とても温かい。
「で、あんたはなんでここにいるわけ?
土方が旧幕府敗走軍にいて、えらい出世したってことはもちろん知っているけど。
あんたの相方も、一緒についてきてるの?」