幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
「このブーツ、子供用だってさ。西洋人は無駄にでかいよな」
そう言いながら、槐は奥からもう一つ風呂敷包みを持ってきた。
その中身だけは、大きな白い箱に入っている。
「これは?」
「開けてみな」
なんだろう。もしかして、新しい武器?
ドキドキしながらそっと蓋を開けると、そこに入っていたのは……。
「ど、ドレス!?」
持ち上げてみると、それはなんかやけにフリフリのついた、臙脂色のドレスだった。
そういえば、五稜郭の宴会で、招待された婦人たちがこぞって同じようなものを着ていたような……。
ちなみにその人たちは京で言う芸妓のような人もいたし、函館の偉い人の奥さんたちもいた。
あたしはもちろんボロボロのお下がり軍服で、その様子を見てた。
「べつに、欲しいとか言ってないのに……」
そりゃあ、ちょっとは着てみたいな~とは思ったけど。
ちょっとは、自分の汚い格好が、恥ずかしかったりしたけれど……。
総司が気づいてくれていたなんて、思ってもみなかった。