幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
「きっと大丈夫。何があっても、あたしはこいつと生き延びてみせるから。
あんたたちは何も気にせず、存分に戦いな」
「槐……」
「これからも戦いが待ってるんだ。
冬の間くらいは、旦那に甘えてもいいんじゃない?」
そう言って笑った槐の顔は、昔よりずっとキレイだった。
守るべきものを見つけた、強さのにじむ綺麗さだ。
陽炎のことを引きずり、新撰組を憎んで戦っていたときより、ずっと輝いてる。
「ありがとう」
あたしは槐にお礼を言い、五稜郭に帰ると、部屋にいた総司の背中に抱きついた。
総司は槐があの屋敷にいることは知らなかったみたいで、あたしの話を驚いた顔で聞く。
もらった服のことや、槐のことや、その息子のこと。
興奮して話しているうちに、総司が笑っていた。
「お前が楽しそうだと、俺も嬉しい。
鳥羽伏見の戦いから、お前のことを泣かせてばかりだったから」
そんなことを言われたら、胸がつまって、言葉が出てこなくなってしまった。