幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
総司の笑っている顔だって、京のときよりずっと少なくなったじゃない。
ううん、総司だけじゃない。
斉藤先生も、平助くんも、みんな、みんな……苦しい日々の中で、どれだけ笑えているだろう。
あの祝言の日みたいに、またみんなで笑いあいたい……。
「そんな顔するなよ。ほら、笑え」
総司はあたしの頬を両側からつまんで引っ張る。
そして指を離すと、そっとあたしに口づけた。
「……そろそろ、この見た目にも慣れたか?」
「え……」
「我慢の限界なんだ。覚悟してくれ」
そう言って総司はあたしを抱き上げ、ベッドに横たわらせた。
髪を撫でながら口付けを落とし、シャツのボタンに指をかけていく。
その優しい仕草は、前から知っている総司そのものだった。
降りしきる雪の寒さを溶かすように、周囲の空気に、そしてあたしの体にも、熱がこもっていく。
あたしは目を閉じ、抵抗せずに彼を受け入れた。
槐のように、あたしも、前を向いていこう。
まだ厳しい道のりは続きそうだけど、きっと今日みたいに、素敵な一日だってあるはずだから。