幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
宮古湾海戦
明治2年3月。
厳しい冬が終わると同時に、つかの間の平穏は破られた。
「新政府艦隊が品川沖を出航したらしい」
ついに新政府軍が動き出したらしく、あたしたちの周りはたちまち慌ただしくなった。
やっぱり、敵が蝦夷共和国を放っておいてくれるわけないよね。
「あっちは軍艦と輸送船、あわせて10隻の大艦隊だと」
「ひええ~……」
それに比べて味方の軍艦は、冬の間に旗艦開陽と神速の2隻が座礁してしまっている。
蝦夷地に上陸したときより、旧幕府軍の攻撃力はかなり弱まっていた。
うう~、やっぱり船なんか嫌い。
そもそもあんな鉄のかたまりが、海に浮いてるのがおかしいんだ。
「で、どうするの?もしや、海の上で戦うの?」
そうなれば元海軍の榎本さんの出番。
あたしたちは陸で待っていることになるのだろうか。
あたしの質問に、総司はにやりと笑って答えた。