幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
「その通り。まず、敵の『甲鉄』を奪う」
甲鉄とは、元々江戸幕府がアメリカに発注した、大きな軍艦らしい。
幕府がつぶれて引き取り先がなくなっていたものを、新政府軍が買い取った。
「奪うって、どうやって……」
「外国の旗を味方の船に掲げ、甲鉄に近づいて、乗っ取る」
「ええ!」
つまり、甲鉄に3隻の船で近づいて囲み、縄か何かを使って乗り移り、敵を征圧して船を奪うということみたい。
「そ、それ……誰がやるの?」
「指揮官は甲賀さん。俺は検分役」
「ええ~っ、総司も乗るの~!?」
よく聞いてみれば、新撰組隊士も何人かついていくらしい。
そんなあ。
総司が行くならあたしも行きたい。
けど、絶対船酔いするじゃん。
酔ってたら、戦えないじゃん。逃げることもできなさそう。
「無理しないで、待ってていいぞ」
「うう……」
なんとか、陸から甲鉄を奪う手立てはないものか。