幕末オオカミ 第三部 夢想散華編


「あ、そういえば。
ねえ、総司は土方さんが使ってた風の力は使えないの?」


それが使えれば、波を操って敵の艦隊を沈没させることができやしないか?


「さあ……使おうと思ったことがねえからな。
もののけ相手ならいいが、人間相手にあんな力使ったら、味方が驚いて逃げちまうだろ」


つまり、やってみないとわからないということか。


たしかに味方も驚くだろうけど、勝てればそれでいいじゃん。だめ?


膨れて見上げるあたしを苦笑しながら見下ろす総司。


「俺は、『土方歳三』の名を汚すわけにはいかないからな」


ううーん、そうか。


妖術使いだなんて有名になったら、土方さんの評判は京のときよりずっと悪くなるだろう。


せっかく、『土方さんは北に行くほど優しくなった』と最近は言われているのに。


それも味方からだけの評価で、新政府軍からしたらいまだに、『討幕派を斬りまくった大悪党』なんだろうけど。


「まあ、先のことはわからねえけどな」


そう言いながら総司は海図を机の上に広げ、詳しい作戦を話しはじめた。



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