幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
「平助くん……っ」
あたしも、大好きだったよ。
恋ではなかったけれど、いつも明るくあたしを支えてくれた平助くんが、大好きだった。
ぎゅっと握った平助くんの手は、すでに冷え切っていた。
「銀月!逝くな!」
視線を移すと、銀月さんの体も光を放ち始めていた。
「やだっ、銀月さん!死んじゃいやぁぁぁ……」
栓が外れたように、ぼろぼろと涙が溢れだす。
銀月さんの姿が、涙でぼやけた。
「お二人とも……ありがとうございました。
人間など信用したことはありませんが……あなたたちのことだけは……」
「やめろ!別れの言葉なんか吐くんじゃねえ!」
「……お二人とも……お元気で……」
「銀月!」
銀月さんはゆっくりと目を閉じる。
すると、平助くんの魂を追いかけるように、その体から抜け出た魂が、天へ昇っていった。
あとに残されたのは、人間に戻った平助くんと、普通の大きさの狼の遺体。