幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
平助くんは洋装だったけれど、その上に浅葱の羽織を着ていた。
京の時代のあたしたちの誇りだった、だんだら模様の浅葱の羽織。
血に濡れたそれを、総司は力任せにつかんだ。
「馬鹿野郎ども……!」
総司は羽織に顔をうずめ、しばらく動かなかった。
その肩に顔をよせると、やっぱり小さく震えていた。
あたしはそっと、総司を抱き寄せる。
平助くん、銀月さん、狼はまだいるよ。
ここに、人間になってしまったけれど、心はずっと壬生の狼のままの……総司がいる。
ありがとう。
あとはあたしが、この最後の狼を守っていくからね。
ありがとう……。
顔を上げると、開けていく空に、まだ星が残っていた。
その中を進んでいくひときわ明るい二つの光を、いつまでも見送った。