幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
「沖田さん、俺たちが持ちます」
兵士たちが重い水桶を運んでくれる。
「ありがとう」
あたしはお礼を言って、戦場に視線をやる。
すると、夜空一面が、白い煙に汚されていた。
強い硝煙のにおいが、ここまで漂ってくる。
これが、新しい世の戦争……。
きっと、これからも新兵器はどんどん産まれていくことだろう。
平助くんや銀月さんを倒したガトリング機関銃さえも超えてしまう、ものすごい兵器が。
一度にたくさんの人を殺せてしまうなんて、怖い。
一対一の斬り合いより、よっぽど相手の命の重みがわからなくなっていってしまう。
「交代だ!撃て、休むな!」
そういう総司は一瞬も休まず、味方に指示を出し続けている。
あたしは冷やした銃身を担ぎ、また照準を合わせた。
こんな殺し合いは怖いし、嫌だけれど、あたしたちは誇りを失うわけにはいかない。
失った仲間たちのためにも。
そのために、戦うしかないんだ。
結局、戦いは翌朝まで続き、土方軍は敵を撃退することに成功した。