幕末オオカミ 第三部 夢想散華編


「ウソだ」


ぺたぺたと、総司の顔を触る。


頬から、首から、温かみが急速に失われていく。


「やだっ、やだよ……」


ぼろぼろと涙がこぼれた。


「総司ぃぃぃぃっ!!」


いくら呼んでも、もう返事が返ってくることはない。


「いやああああっ、ああああぁぁぁぁ……っ」


衝動のままに叫ぶと、急にお腹の皮が固く張り詰めるような痛みを感じた。


ほら、総司。この子も、行かないでって言ってるよ。


ぽたぽたと、あごを伝った涙が、総司の頬に落ちる。


落ちた涙は、総司の唇へと流れていった。


その瞬間。


ふわりと、あたたかな光が総司の全身を包んだ。


「なに……?」


光はふわりふわりと小さな塊を描いてあたしたちの周りに浮かぶ。


まるで、散っていく桜のように。


光の花びらが、総司とあたしに降り注ぐ。


綺麗……。


見とれていると、花びらたちは総司の全身の傷に降り注ぐ。


そして、あたしの肩の傷にも。


ずきずきと痛んでいた傷が、急に温かいような感覚に包まれる。


癒されている。そう感じた。


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