幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
全く知らない土地で一から生活を始めるなんて、大変に決まっている。
外国だっていつ戦争が起きるかわからないし、平穏な日々が待っているとは限らない。
けど、総司と一緒にいられれば、なんとかなる気がするんだ。
まだ心は『壬生の狼』のままの、総司と一緒なら。
たくさんの困難を乗り越えてきたね。
つらいこともたくさんあったけど、あんたを信じてついてきてよかった。
新撰組のみんなと過ごした日々は、これからもずっと、あたしの誇りだよ。
「これからもよろしくね、旦那様」
そっと寄り添うと、総司はあたしの背に腕を回し、ぎゅっと抱き寄せた。
まぶたを閉じると、美しい桜が咲いた京の景色がよみがえる。
目を開けて浅葱色の空を仰げば、同じ色の隊服をまとった仲間たちが笑っているのが見えるような気がした。
彼らの思い出を胸に抱いて、あたしたちは旅立つ。
新しい、夢を乗せて。
【完】