幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
「……まだ、巻き返せるよね?」
ぽつりとつぶやくと、隣にいた総司がため息をついた。
「さあな……」
「さあって……まさか、新撰組を抜けてもののけになるつもり?」
その横顔をのぞきこむと、総司は首を横にふった。
「いいや、俺は最後まで新撰組と共にあるつもりだ。
けど、鳥羽伏見の様子から見ると、そうとう厳しい戦いになると思う」
たしかに……あっちは近代兵器を使いこなしてるし、官軍側に寝返る藩はこれからも多くなっていくだろう。
けれど、簡単にあきらめることなんかできない。
たとえ、総大将にやる気がなくても。
あたしたちが信じてきた誠を、簡単に曲げることなんかできない……。
「なあ、楓」
「ん?」
難しく考え込んでいたあたしに、総司が優しく声をかけた。
「もう離さないなんて言っておいて、今更だけど……江戸に着いたら、しばらく俺の実家にいないか?」
「総司の実家?」
「今は母が亡くなって、姉夫婦が継いでる。金を渡すから、しばらく匿ってもらえ」