幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
禁門の変に関しては、六角獄の件もあったし、京の街は大火事になったし、色々ツッコミたいこともあるけど……。
わざと明るい声で元気づけようとすると、上様は立ち上がったあたしを見上げ、ふっと笑った。
「やればできる、か。まるで子供扱いだな」
「いや、そういうつもりでは……」
「お前たちのような若者が、むざむざと死ぬことはない。あきらめろ。あきらめて、時代に身を任せるのだ」
時代はもう、徳川の世を必要としていないということ?
「……上様の御心はわかりました」
黙っていた総司が、ぼそりと低くうなった。
「それでも我々新撰組は、最後まで誠の旗の元に戦うでしょう」
「沖田……」
「ただもののけたちは、この戦いから手を引くと思います。それでよろしいでしょうか?」
総司が言うと、上様はハッとしたような顔をした。
きっと、もののけたちとの同盟のことなんか忘れてしまっていたんだろう。
「ああ……すまなかった」
「楓は返せませんが、いいですね?」
「ああ。いらぬ」
いらないって……ほしいって言われても困るけど、失礼な言い方!