幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
「たしかに、袂がないほうが銃は扱いやすいだろうな」
原田先生は納得して、箱から自分にあいそうな洋服を探し出す。
「あんたがそう思うなら、一度着てみるか」
永倉先生も、しぶしぶながらうなずいた。
すごいな、副長……。
古武士の慣習を重んじていると思いきや、鳥羽伏見での経験を活かして、あっさり洋式に切り替えちゃうなんて。
もちろん刀は捨てる気はないみたいだけど。
広間に隊士を集めて洋服を配ると、彼らは早速下帯一枚になり、着替えだした。
その着こなしは人それぞれで……着物の上にベスト(副長が来ていた袖のない上着はそう呼ぶらしい)を着たり、シャツの上に陣羽織を着たり、ベルトの代わりに帯を巻いたり、なんだか不思議な格好になってしまう人もけっこういた。
そういうあたしも正解がわからないんだけど。
「やっぱり副長はオシャレだよなあ……顔で得してるよな」
「沖田隊長も手足が長いから、似合うだろうな。今頃元気にしているかな」
初めてのボタンに苦戦しながらそう話し合う隊士たち。
そうだ、いないことになってるけど、総司や平助くんもきっとこの騒動に巻き込まれているはず。
見たい……見たいぞ、総司の洋装!!
あたしはそっと広間を抜け出すと、いつも総司と平助くんがいる奥の部屋に向かった。