幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
──夜が明けると、ついに新政府軍が動き出した。
こちらの陣に向かって、大砲を撃ちかけてきたのだ。
応戦するしかなくなった甲陽鎮撫隊。
身を隠すものが何もない中での野戦が始まった。
土方副長はまだ到着せず、いざ戦となったら農兵たちは見物人と化してしまう。
大砲を使いこなせる者もおらず、寄せ集めの兵はすぐに散り散りになった。
来るはずの会津の援軍は来ない。
やがてそれは、隊士たちの士気を上げるための嘘だったということがわかる。
局長は絶対に勝てると思い込んでいたから、そんな嘘を言ったんだろう。
もののけたちは指揮官である総司が動けないことと、夜になる前に戦の勝敗がほとんど決してしまったことで、出番を失った。
こうして、誰もが心配したとおりに……甲陽鎮撫隊はたった一日の交戦で、壊滅してしまったのである。