蕾 〜A bud of fate〜
ちくわを馬鹿にされ苛々しながら花朔達と別れ帰宅した。
今日も疲れたな…
ていうか…夜、本当にやるのか…?
いや…例えあんなやつらでも…常識ぐらいは…
と考えながらリビングに移動し、鞄をソファーの上に無造作に投げ置いて、落ち着つこうと思ったのだが…
「喉渇いた…」
喉の渇きに気付き、冷蔵庫を漁る俺。
「……なんで唯一の飲み物が…豆乳だけ…?」
中には豆乳しか無かった。
他は野菜や肉や調味料ばっか…。
仕方ない…買いにいくかな…
冷蔵庫を閉め
そのままの格好で外に出た。
7月はもう夏だ。
夏は嫌いだ。ずっと暑い。
昼間よりはマシだが
夕方でも少し暑さを感じる。
汗でベタベタする身体がさらに汗をかいたからのか。
暑さを超越した感じになってきた。
「やばいな…早く飲み物買って帰ろう。」
そう俺は呟くと
早歩きでコンビニに向かった。
ん…?
なんだあれ…?
俺の目線に入ってきたのは、
この暑い中、真っ黒な長いコートと魔女みたいな黒い帽子の女の人が立っていた…
あっついのに…よくやるよ…
っと馬鹿にしながら横をすれ違った瞬間、
「……の芽」
と聞こえるか聞こえないかの声で何か言われた。
不意討ちだったからあまりよく聞こえず
気になったからもう一度聞こうと振り向いたんだが…
「あれ…」
振り向いた先には
夕焼けが照らし出す俺の影しか無かった。