蕾 〜A bud of fate〜


「にゃんかね〜。夜運君だけは必ず、引きずってでも連れていってくださいってぇ。よくわかんにゃいから、はいって言ったら帰ってったよぉ?」


と、猫己は淡々と話すが…全然理解が出来ない…。

なんで、俺が?

何故その黒ずくめは俺に拘る…

あれ…?
黒ずくめ…?


「そういえば…黒ずくめの女…俺見たわ…。夕方に…。」


思わず、そう呟くと花朔が眉間にしわを寄せ俺に近づいてきた。

な、なんやねん…


「夜運。その女は何か言っていたか?」


花朔がまたもや真面目な顔をしてる…


「え…あ…よく聞き取れんかったから何言われたかは分からん…けど何かは言われた…」


花朔に圧倒されながらも問いに答えた。


なにか重要なのか…?

考えても考えても何一つ分からない…。

俺は無言で考え込んでいると、

「まぁ、とりあえずだ。病院行こう。」

おい…花朔。
他人事やと思って…


「ちょい待てって!何故か知らんけど俺の命が懸かってるんやで?」


「わかってる。だから行くんだよ。本当に夜運君が死んでしまうとは思ってない。けど…何か嫌な予感がする。」

嫌な予感って何だよ…。

不安で俺涙目。


「私もぉ。おかしいじゃぁん。みんな黒ずくめの人見てるってのもぉ。そしてみぃんな夜運に拘るのもぉ…だから、私も行った方が良いと思うぅ。夜運ぅ、行こ〜?」


くっ…こいつ…軽い言い方しとるけど、俺の考えてた疑問と同じ事を…


…………っ。

俺も…男だ。
覚悟を決める。
てか、普通に死ぬとかありえんやろうし、な。
行こう。

「…わかった。行こう。あ、それとさ。盗んだ器具はどうすんの?何処に持っていくん?」


今気付いたわ、これ。


「あぁ、明日の朝イチにまた取りにくるって。明日まで保管してて欲しい。そして出来る限り時間をかけて、沢山医療器具を盗んでください、とも言ってた。」
と花朔が話す内容に俺は驚いた。

な…なんて無計画。
高校生に盗みをさせるだけに止まらず、それを保管しろと…しかも時間をかけて、沢山と来たか…

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