龍蝶~闇に隠された愛~【下・完】

一翔は私を抱きしめてくれた。


「寒いだろ、送るよ。」


しばらく抱き合って一翔はそう言った。


「……うん。」


久しぶりに繋いだ手は一翔の温もりと優しさを詰めていた。


「……。」


「…。」


家まではお互い無口だった。


「じゃぁ…。」


一翔はそう言って手を放した。


(これが最後…)


ふと、私の頭をよぎった。


「っ…一翔!!」


私は消えていく一翔の裾を引っ張った。


「…梨華…?」


「…行かないで…っ、一人にしないでっ…」


我慢していた不安が溢れて、


溢れて、止まらない…。


目の前の一翔が消えてしまいそうで離したくなくて…



< 25 / 91 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop