龍蝶~闇に隠された愛~【下・完】
一翔は私を抱きしめてくれた。
「寒いだろ、送るよ。」
しばらく抱き合って一翔はそう言った。
「……うん。」
久しぶりに繋いだ手は一翔の温もりと優しさを詰めていた。
「……。」
「…。」
家まではお互い無口だった。
「じゃぁ…。」
一翔はそう言って手を放した。
(これが最後…)
ふと、私の頭をよぎった。
「っ…一翔!!」
私は消えていく一翔の裾を引っ張った。
「…梨華…?」
「…行かないで…っ、一人にしないでっ…」
我慢していた不安が溢れて、
溢れて、止まらない…。
目の前の一翔が消えてしまいそうで離したくなくて…