泣き虫彼氏と強がり彼女。【上】
〝ガラッ〝

「席に付けー。」

そう言って教室に入ってきた男。

「!!」

(か、楓さん!?)

橘 楓(たちばな かえで)。

蓮唯の母親、美麗の知り合い。

「んじゃぁ、適当に席座っとけ。」

かえで先生はそう言うと教卓の前に立った。

「えー…俺は橘 楓。
今日からお前らの担任だ。以上。」

そう言ってさっさと教室から出て行った。

「知り合い?」

朱音が言う。

「お母さんの知り合いっていうか…弟…。」

「えぇ!?み、美麗さんの弟…」

朱音は蓮唯の家庭を知っている。

「でも苗字…」

「あぁ…楓さんは独身だから。」

「そっかぁ…美麗さん橘だったもんね。まぁそれはそれですごいけどね…。
橘って言ってもただの橘じゃないしね。
なんて言ったって橘財閥のお嬢様だし…。」

橘財閥とは世界トップのファッションブランドをもつ大手企業会社。

「それに世界一のピアニストでもあるんでしょ?
いいなぁ…」

朱音がそういう。

「あのねぇ…朱音さん?楓さんがどれだけ怖いか知らないでしょう?」

美麗はそう言って帰る支度をする。

「かっこいいから大丈夫だよ。」

朱音は綺麗に塗られているマニキュアをいじりながら言った。


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