泣き虫彼氏と強がり彼女。【上】
「あ!ねぇねぇ蓮唯どこ行くの?」

歩き始めた蓮唯を追いかけて朱音はいう。

「理事長のところ。お母さんから頼まれたものを渡すだけ。」

蓮唯がそう言うと希子が静かに言った。

「この学園の理事長ってわたくしのお父様の同級生ですよ。」

「えぇ!…希子のお父さんの同級生ってすごくない!?」

朱音はテンションをあげて蓮唯に聞く。

「そうだねぇー…」

「流さないでよぉ~」

「あ…」

蓮唯はそう言って立ち止まる。

「な、なによ…?」

「どうされたんですか?」

朱音と希子は驚く。

「楓さん…」

前を歩く楓に蓮唯は小さく言った。

「か、楓先生!!」

朱音は大声で楓を呼ぶ。

朱音に呼ばれて楓は後ろを振り返った。

「おぉ。蓮唯じゃねぇか!!」

「ご無沙汰しております…」

蓮唯はふてくされていう。

「はは。今日も麗都と麗牙に送られてきたのか?
お前は懲りないな。姉さんと一緒だ。」

楓は笑いながら言った。

「お前は…一十木んところの…」

「はい!朱音と申します!楓先生!!」

朱音は楓に呼ばれてウキウキ。

「先生なんてくすぐったいな~」

楓はそういい鼻の下を伸ばす。

(くすぐったいとか言いながら鼻の下伸びてるよ…。
楓さん…。)

蓮唯はそう心の中で呟いた。

「どこ行くんだ?」

楓が聞いた。

「理事長んとこ。」

蓮唯はそう言って楓の前を通り過ぎた。
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