紅葉


そんなある日、益々弱まった私を独りにしないようお母さんが病室に泊まっていた。



「紅葉、寒くない?」



布団を被せにきたお母さんが優しい顔で言ってきた。



「お母さん……大好きだよ」




この言葉が後何回言えるんだろう……



「…っ…何言ってるのよ…」



突然過ぎる私の言葉に、反応が遅れるお母さん。




「私を産んでくれてありがとう………」




「っっ……」



本当にありがとう………




お母さんは、昔の様に私を抱き締めていた。



「お母さん…あったかい………」



「…っ……っっ……」



「いつも、私の我が侭聞いてくれてありがとう………」



肩を揺らすお母さんの腕の中で私は自分の儚さを改めて実感した……………




でも…………………




最後だけ………




声が聴きたい………………





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