紅葉
ある夜、ケータイに電話がかかってきた。
それは数日間会ってなくて、ケータイでは何ヶ月ぶりかの名前がディスプレイに映っていた。
紅葉だった…………
「紅葉、どうした?!」
『コホッ……コホッ……明…』
「何でこんな時間に……」
しかも、病院にいるならケータイは使えないはず……………そんな思いが巡る中で紅葉は言葉を続けていく。
『明にね、言っておきたい言葉があるんだ……』
紅葉が震える声でそう呟いた。
「明日聞いてやるから早く……」
「寝ろよ」と言おうとしたが言葉が詰まった。
紅葉の声の後ろでは、微かに木々が揺れる音が聞こえてきたから。
「紅葉…………今、何処にいるんだ?」
『コホッ……コホッ…』
紅葉が咳をする。
あの、俺の隣から居なくなったあの日と似ている苦しそうな咳を…………