紅葉




ある夜、ケータイに電話がかかってきた。




それは数日間会ってなくて、ケータイでは何ヶ月ぶりかの名前がディスプレイに映っていた。






紅葉だった…………





「紅葉、どうした?!」



『コホッ……コホッ……明…』



「何でこんな時間に……」



しかも、病院にいるならケータイは使えないはず……………そんな思いが巡る中で紅葉は言葉を続けていく。



『明にね、言っておきたい言葉があるんだ……』




紅葉が震える声でそう呟いた。



「明日聞いてやるから早く……」



「寝ろよ」と言おうとしたが言葉が詰まった。



紅葉の声の後ろでは、微かに木々が揺れる音が聞こえてきたから。



「紅葉…………今、何処にいるんだ?」



『コホッ……コホッ…』



紅葉が咳をする。





あの、俺の隣から居なくなったあの日と似ている苦しそうな咳を…………





< 7 / 12 >

この作品をシェア

pagetop