影光 ーmoonlightー
「いきなり消えないでくださいよ。




嫌われちゃったのかなって思ったじゃないですか…」






何も言えない。




失うことが怖くて人と近くにいられない。





失うことに免疫がなくて震える。







「夢叶先輩が何考えてるか分かんないですけど



俺、ちゃんと知ってますから。その…色々」






言い淀んだ梶山くんは私の隣に腰を下ろした。




今日の空の色は何色だっけ。





予報では一日中曇り。曇天だったはず。




空が好きなのは人間の性のようだ。





風が吹くたびなびいてしまう髪を手で押さえつける。





梶山くんはその手をとった。







「俺ん家ピアノあるんです。





弾いてください。それだったらいいでしょ?」






足の間に顔を埋めたまま頷くと



校舎へ戻り1分ほどで戻ってきた。





私のカバンを持って歩き出す。






手を自然に引かれ、自然と見上げた空は





黒い雲が漂った灰色の空だった。
< 14 / 39 >

この作品をシェア

pagetop