影光 ーmoonlightー
意外と梶山君の家は学校に近いことを知った。
言ってた通り大きなグランドピアノがあった。
黒いつやつやとした表面は
日々磨き上げられている証拠だ。
ソファに腰かけてピアノを見つめていると
そのピアノ、もう誰も使わないんですと
声が降ってきた。
「…そうなの?」
泣いてた訳でもないのに声がかすれる。
梶山くんはテーブルに紅茶を置き、寂しそうに笑った。
「俺小学校まで都会で暮らしてたんです。
両親の仕事が忙しくて…ここは祖父母の家なんです。
母がピアノを弾いてたんですけどもう
誰もこのピアノ、弾かないから」
もう考えていることを
知られてしまっている気がした。
「でも俺が来るまでは調律師もちゃんと呼んで
音は合ってます。
でも、このピアノも弾く人がいないと
悲しいと思うから…
必要にされなかったらいる意味ないって感じちゃうから…」
梶山君は色白の手をすっと伸ばした。
よく見ると、手には複数の痣があった。
遠くからでは分からない程度の痣だけど
毎日されているような、傷。
腕をまくるとそれは全体にも広がっていた。
最近ついたものだろうか。
紫色に変色していたり、青くなっている。
「だから、先輩の目を見た時
なんか似てるなって思ったんです」
「…え?」
一瞬、理解が出来なかった。
梶山くんの目は、しっかりと私を捉えていた。
言ってた通り大きなグランドピアノがあった。
黒いつやつやとした表面は
日々磨き上げられている証拠だ。
ソファに腰かけてピアノを見つめていると
そのピアノ、もう誰も使わないんですと
声が降ってきた。
「…そうなの?」
泣いてた訳でもないのに声がかすれる。
梶山くんはテーブルに紅茶を置き、寂しそうに笑った。
「俺小学校まで都会で暮らしてたんです。
両親の仕事が忙しくて…ここは祖父母の家なんです。
母がピアノを弾いてたんですけどもう
誰もこのピアノ、弾かないから」
もう考えていることを
知られてしまっている気がした。
「でも俺が来るまでは調律師もちゃんと呼んで
音は合ってます。
でも、このピアノも弾く人がいないと
悲しいと思うから…
必要にされなかったらいる意味ないって感じちゃうから…」
梶山君は色白の手をすっと伸ばした。
よく見ると、手には複数の痣があった。
遠くからでは分からない程度の痣だけど
毎日されているような、傷。
腕をまくるとそれは全体にも広がっていた。
最近ついたものだろうか。
紫色に変色していたり、青くなっている。
「だから、先輩の目を見た時
なんか似てるなって思ったんです」
「…え?」
一瞬、理解が出来なかった。
梶山くんの目は、しっかりと私を捉えていた。