影光 ーmoonlightー
「先輩、背中どうしたんですか?」





まっすぐな瞳で捉えられそう問いかけられた。




言葉に出せない。





絶対に、言ってはいけない。






「…すいません。教室で寝てる時うっかり見ちゃって…




腰の辺り、あれ日常的にやられてたものですよね?






俺もあるんです。だから、プールに入れなくて」






答えられない。




答えたら、きっとここに居られない。



目は合ったまま静かに時は過ぎていく。



私が動かなくても時は動く。




人が一人いなくなっても時は動く。





どんどん動いて忘却の彼方に飛ばされる。





思い出したくない、あの日。





あれを思い出してしまえば





あれを言葉にしてしまえば








きっと私はここにいられない。
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