care~男嫌いな私とアイドルのあいつ~
夏風が彼のスーツと髪を揺らす。
…空だ。
空は私に背を向けたまま柵に
手を置いて下を眺めている。
もしかしたら空は屋上に
休憩しに来ただけかも…
バン!!!!!!!!
後ろから物凄い勢いでドアが開く音がした
「…け、慶くん!!?」
そこに立ってたのは慶くんだった。
「あれ?!美咲!!?」
「空!!!」
空は私に気づいて駆け寄ってくる。
「ごめん空…私…」
「もうめっちゃ捜した…のに
全然見つからないから屋上から
見つけようとして…」
「わ、私も!!!!」
同じことを考えていたことに
思わず笑ってしまう。
「で、慶、なに?」
空は私たちの前で立っている慶くんに
目を向けた。
空の目は鋭くて冷たい。
「ごめん、俺が美咲を連れ出したりして」
慶くんは私達の方を見ようとせずに
ただジッと床を見つめている。
「ちがうの、空!これは…」
「俺、美咲の事が好き!!!!」
…な、なんで今。
でも空はその慶くんをただ
見下ろしていて何も言わない。
「俺、あの時、空が俺を殴って美咲を
連れ出した時、追いかけなかったのを
凄い後悔してる。」
「だから今日は追いかけてきたの?」
私の問いにコクリと慶くんは頷いた。
「でも美咲が追いかけてるのは
いつだって空だった。
俺と話してる時もどことなく空を
目で追っていて、でも俺、そんな
美咲を絶対振り向かせるって思って」
私と空は慶くんを無言で見つめる。
「でも無理だった。
やっぱ空にはかなわねーよ。」
慶くんは空を見つめて、
ふふって微笑んだ。
そんな慶くんに空は手を伸ばし
頭をくしゃりと撫でる。
「慶みたいな男らしくて
一途な奴、初めてだよ」
「照れるからやめろ」
お互い笑い合い、そして空は
また真顔に戻る
「でも美咲に近づく男は容赦なく
蹴落として行くから」
「うわっこっわ。ははっじゃあ
俺、クラスに戻るよ。お前のせいで
客いなくなったみたいだし」
「元はと言えば、お前のせいだろ」
慶くんはそうだっけ?と笑いながら
呟き、そのまま屋上から出て行った。