暴走族に愛された不登校女子。
*全部教えて欲しいんだ*
* Story 9 *
直樹の家に上がると、嵐さんは直樹をベッドに下ろした。
あたしはタオルを冷たい水で絞って、直樹の額にのせた。
「杏ちゃんは知らないと思うけど……。
この前も杏ちゃんを助けに行った帰り、直樹は熱を出したんだ」
何で、と言いたげな視線で見ると智さんは俯いた。
「直樹が人と喧嘩しないのは、昔自分の母親が病院送りになったからなんだ。
直樹が父親と喧嘩していた時、2人の間に母親が割り込んだみたいで…。
その時のショックが大きかったのか、人を殴ると熱が出るようになっちゃったみたいなんだ」
「…そんな」
直樹は苦しげな表情を浮かべたままだ。
あたしの瞳から涙が零れ落ちる。
「そこまでしてあたしを……守ってくれたの…?」
「…杏ちゃんは何1つ悪くないから……。直樹のことは頼んだよ。嵐と俺は、今から頼まれた仕事をしなきゃいけないんだ。
だからまた今度ね」
「え、直樹は…」
「杏ちゃんがいるなら、大丈夫でしょ」