暴走族に愛された不登校女子。





「智さん。あたしが直樹と出会ったのは、すぐそこの海なんだ。



あたしが…家出をしたから。

もう家にいるのがうんざり。お母さんの所にもいたくなかった。




少しでも早く自立したくて…」





「…家出? それだけで直樹と住んでんの?」


「え?」






少し冷たく聞こえて、顔を上げた。

猫と遊んでいたはずの智さんがいなくて、あたしのすぐ隣にいた。





「あのさ、杏ちゃん。言っちゃ悪いけどそれは、甘えなんだよ?


家に帰りなよ。親が心配してるから」




「……なんで?」







何で?



智さんはあたしに帰れって言うの?




あんな。




あんな醜いところに。




< 131 / 304 >

この作品をシェア

pagetop