暴走族に愛された不登校女子。
「智さん。あたしが直樹と出会ったのは、すぐそこの海なんだ。
あたしが…家出をしたから。
もう家にいるのがうんざり。お母さんの所にもいたくなかった。
少しでも早く自立したくて…」
「…家出? それだけで直樹と住んでんの?」
「え?」
少し冷たく聞こえて、顔を上げた。
猫と遊んでいたはずの智さんがいなくて、あたしのすぐ隣にいた。
「あのさ、杏ちゃん。言っちゃ悪いけどそれは、甘えなんだよ?
家に帰りなよ。親が心配してるから」
「……なんで?」
何で?
智さんはあたしに帰れって言うの?
あんな。
あんな醜いところに。