暴走族に愛された不登校女子。
直樹が頬を離したのを見て、小さくため息を零した。
「何それ…」
頬を片手で押さえながら呟いた。
「…温めてやるよ」
「っ!」
「あ? 何の妄想してんだよ」
「何もしてませんっ!」
今、絶対顔が赤い。
きっとバレているのだろう。
それからいつも通りバイクで駅まで送ってもらった。
「メアド、登録しておいた。何かあればメールと電話な」
「はぁい」
直樹に手を振って、駅に入る。
温かいホットレモンを買って手を温めた。
「…さむ」
白い息を吐いて、どんよりとした空を見上げた。
「……杏」
その切ない声に振り向けなかった。
ただ今日も気にかけてくれるのかと思うと、胸が苦しくなった。