暴走族に愛された不登校女子。
だったら尚の事、覚えていないことに後悔する。
「…でもな。俺はその後親が一時期離婚騒動だったぽくて、
祖母に引き取られたんだよ」
「あ…そうだったんですか…」
「まぁ、それで今は別居してるし」
「…兄ちゃん、そろそろいい?」
「蒼太…、俺の昔話をしている最中に…!」
蒼太は呆れ顔で苦笑していた。
お兄さん…。
とても懐かしい人だった、はずなのに。
それはあたしにとって、大事な存在だったはずなのに今では覚えていないのだ。
「杏ちゃん、そんなに悲しい顔すんなよっ! 思い出すって!!」
「っへ、あぁ。すみません」
つい表情に出ていたらしく、気を使ってくれた。
あたしは少しだけ笑みを見せる。
「またゆっくり話しましょう」
「それもそうだな。蒼太がうずうずしてるし」
「人を犬みたいに言うなっ!」
2人が喋っている姿はどこか懐かしく感じた。
蒼太も普段見せない心から楽しそうな表情を浮かべている。