暴走族に愛された不登校女子。
カラオケ室に入ると、蒼太がマイクを渡してきた。
「好きなだけ歌って」
「うん…」
心の奥から何もかもが抜け出していくみたい…。
歌うことの気持ちよさが身体中に広がっていく。
「…上手だね。やっぱ、昔から」
蒼太が呟いたのは聞こえたけど、歌に夢中になって気に留めなかった。あたしはずっと歌っていたい、なんて思っていた。
「蒼太も歌いなよ!」
いつの間にか自然と笑えていた。蒼太の瞳が少し揺れる。
「そうだね」
2人でその後はずっとはしゃいだ。時間はあっという間で、気づいたら5時を過ぎようとしていた。
「そろそろ、行こうか」
「うんっ」
お兄さんはもう帰ったみたいだけど、本当に思い出せないのが悔しい。
駅まで送ってもらうと、蒼太が笑みを見せてくれた。
「何かあったら、連絡して」
「分かった」
「…また3日後な」
「うん…」