暴走族に愛された不登校女子。
直樹があたしの髪に触れる。
「これでも可愛いンだけどな。俺が結んであげるから、後ろ向け」
「え、結べるの?!」
驚いて直樹を見つめると、少しだけ頬を赤くしていた。
「…昔、妹いてさ。そいつのやってたからな」
「妹…かぁ」
直樹の瞳が一瞬だけ揺れ動いたから、きっと触れて欲しくないことなのだ。
あたしはそれを感じて、深くまでは聞かなかった。
後ろを向いて、手のひらを強く握り締める。
直樹が髪に触れる手が優しすぎて、くすぐったい気持ちになる。
「お前は、兄弟とかいんの?」
「ううん。一人っ子」
「ふぅん」
少しだけ声のトーンを落とした直樹だったけど、すぐに話題を変えて話を繋げた。
「………“蒼太”はどんな存在?」
“蒼太”っていう単語を言葉にするのが直樹は最近多い。
それぐらい彼の存在が気になるのかな…。
「蒼太は……、幼馴染だったよ」