暴走族に愛された不登校女子。
* Story 4 *
-10年前-
あの時は、あたしと蒼太は6歳だった。
お父さんがまだ生きていて、転勤先に引っ越したのが始まり。
その引っ越したお隣が蒼太の家でそこから仲良くなった。
「あの、これつまらない物ですが……」
お母さんが手短に挨拶を済ませていく。
あたしはそれを横目で見ているだけだ。
「おいっ、お前ちょっと来てっ!」
小声で呼ばれて振り返ると、自分とさほど変わらない身長の男の子がいた。
お母さんはあたしがいなくても別に構わない人だから、何食わぬ顔で近寄った。
「お前が、杏ってヤツ?」
「…うん」
「しっかし、こんな田舎によく引っ越してきたなぁ」
「これが田舎なの…? 田んぼとかないじゃん」
あたしが無表情で言うと、蒼太が笑みを見せた。
「バーカ、田んぼがなくたって住宅だけが並んでいるとこは田舎なの!」
いつも笑顔しか見せない蒼太には、今になっても救われていたと思う。