暴走族に愛された不登校女子。
また…、顔目当て?
「何だよ、その顔!
あぁ! 顔目当てとかじゃねぇぞ?」
「なっ」
何で分かるの?って言いかけたとき、蒼太があたしの手を引っ張った。
「可愛いやつほど、苦しいことを抱え込んでる。そう聞いたかんな」
「…それもお母さんから?」
「そう! じゃあさ、この街を案内するよ! 綺麗な所が多いんだぜ」
蒼太の手のひらは、きっとあたしよりも小さかったと思う。
それなのに凄く安心した。
自分を顔以外で求めるのは、今までいなかったから。
「…わぁ」
蒼太が連れて行ってくれたのは、夕焼けが見える丘の上だった。
家から結構…、というか30分は歩いて着いたところにあった。
「嫌なことがあったらいつも来るんだ!」
「…へぇ」
今に思えば、その丘の上が直樹に初めて連れて行ってもらった場所と同じだった。