暴走族に愛された不登校女子。




「今のヤツ、怖かった?」


「顔、見てない…」




「皆の瞳を見てみたら? ほら。俺の顔怖い?」


顔を上げて蒼太を見つめた。


歯を見せて笑っている優しい瞳と視線が重なる。




「怖くない…」


「そか! なら杏は男嫌いじゃねぇよ! 大丈夫、何かあったら俺が守るから!」

「ありがとう…」




初めて、心の底から笑えた気がする。



頬が緩んでいって、涙が流れ落ちた。




「笑うのも可愛いじゃん!」


蒼太がそう言って、服の袖で涙を拭ってくれた。




「自分で言うのはあれなんだけど、俺。笑顔だけがいいとこだからな!」


「……蒼太は優しいところもあるよ」




「そっか! なら嬉しいな! 杏はいいやつだな!」


「ううん…全然」




いつも後ろ向きだったあたしを、前へと導いてくれたのが蒼太だった。


絶対に責めたりなんかしなくて相手のことを思いやる、それが蒼太のいいところだ。




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