暴走族に愛された不登校女子。
「マークつけてやった」
「……結構痛いんだからね?」
「我慢しろ」
直樹の手を握るとやっぱり大きくて温かい。そこにも安心感があった。
「バイクで…行くの?」
「当たり前だろ?」
「…だよね」
後ろに乗せてもらうと、直樹の服を掴もうとした。
「じゃあ行くから、ちゃんと掴まっておけよ」
「…うん」
少しだけまだ照れるけど、ちゃんと腰に腕を回した。
バイクが動き出すと、いきなり凄い速度だ。これは目が回るのではないかと思うくらいに。
だけどお構いなしに直樹は鼻歌を口ずさんでいる。
ふわりと風が頬に触れて心地いい。外の世界は、一瞬にして見え方が変わる。
それからあっという間に直樹の学校に着いてしまった。
ぼろぼろに汚れた校舎、割れた窓ガラス。そのどれもがあたしの思い描いた場所と違っていた。